私は、とある人のことをひっそり観察してしまうことに気づいた。それは、ああ彼は眠そうだなとか、寝癖ついてるとか、そういうのに気づいてしまうくらいの些細なものだ。

 目が、探してしまうというか。
 こんなこと結菜らに話したらどうなるか。


 恋だね恋だよ!アタックしたら?まずはメアドゲットでしょ。
 ―――想像出来る。
 だから私は言わない。


 恋だなんていうものじゃないだろうって、自分でわかっている。だって、観察くらいなら彼のことじゃなくてもしている。それに、ただかっこいいかも、くらいしか思わない。好きな音楽聞いたときのような胸がキュンとなるようなものはない。

 恋は、たぶんキュンとするかどうか、だと思うのだ。


「まあ、そうだけどさ。付き合ってって知らない人に告白されたら、理恵はどうするのさ」


 恋にはキュンが必要、といった私に結菜がそうカーディガンですっぽり手を覆ったままほおづえをついた。
 確か、もえ袖っていうんだよな、と冷静に思う。