「あのっ…」






身体に張り付く、独特な緊張感。






普通だったら滅多に味わえないんだろうけど、俺からしたらもううんざりするほど経験してきた空気感。







一呼吸おいてその女は








「ずっと前から…凌君のことが好きでした…!」








ほらな、やっぱり。








「なんで?」








いつも通り、なぜ好きになったかを聞いて








「え、えっと…いつも目で追っちゃうぐらいかっこよくて…それにっ」







所詮は外見だという解答を受け取って。







「わりぃ、無理だわ」








いつもと同じ言葉を繰り返す。








泣きじゃくる女をおいてさっさと帰るのは、俺なりの優しさ…なんて、どうせ偽善なんだろうな。