西野がチラッと私を見る。
まずい。これはいつものあれだ。

「小春ちゃん。お願いできないかな」
西野は私が断ることが出来ないことを知りながら頼んできた。
断ることは出来るけど、嫌だと駄々こねてずっと決まらないのが面倒なのだ。
それに、ソプラノは1年生のときに経験したことがある。

「…わかった」
私はソプラノに移ることになった。
自信のない私が更に自信のない歌声しかだせなくなった。