叶亜の部屋は詩音の部屋と二つしか離れていない場所だった。

広さはすこし詩音の部屋より小さいくらいで、ほとんどホテルのスイートルームと変わらない。

置かれていた冷蔵庫から冷えた麦茶を出し、喉に流し込む。

「設備はホテルだな」

呟いてから叶亜は窓の外に目を向けた。

夜の海は暗くて姿を現さない。

こんな大きな海さえも、闇は呑み込んでしまう。