叶亜が指差す先には縄で絞めらた痕があった。

「抵抗した跡もないし……。自殺か?」

阿部が呟く。

「まだ何とも言えません。自殺だとしても彼の胸に刺さったナイフ……。自殺した人間がナイフなんて刺せません。」

「……謎だな。」

阿部が無精髭を撫でる。

「凶器は机の上に置いてあった果物ナイフですよね」

「ああ。見た目からしておそらくな」

詩音は二人の会話を聞いて、ただならぬものが胸の奥から上がってくる気がした。