月が暗い闇夜を照らしていた。 ギギィ…… アスファルトにタイヤがこすれる音が、寂しげな墓に響き渡る。 車いすの男がひとつの墓の前で停まった。 「母さん。父さん。遅くなってごめん」 男は微笑むと冷たい墓石に触れた。 「……へえ。まだ、憎んでるんだ」 そう言って墓に背を向ける。 「……悪いね。僕もまだ分からないんだ。あの事故の謎は……」 月が怪しげな光を放っていた。