「青葉サン。伊織君が呼んでる。」
私イジメのボスに、不服そうに話しかけられた。
「えっ、ぁ、うん･･･」
伊織って誰だろう･･･。
とりあえずドアまで行ったら、矢野君が仁王立ちしてた。
･･･なんか怒ってそう。誰にかな･･･怖いなぁ～
早く通り過ぎて、「伊織君」を探そうと思った瞬間、
「おい、青葉 優」
はい？怒りの相手はあたし？
「はっ、はい！」
「何素通りしてんだよ？」
「伊織君っていう方を探さないといけないんです･･･ごめんなさぃぃ」
「は？伊織は俺だけど？この俺様の名前を知らないとは･･･」
殴られそうな予感がして、ぎゅっと目を瞑った。
でも、降ってきたのは手じゃなくて、矢野君の笑い声。私は意味が分からなかった。
「くくくっ。俺の名前を知らねぇ奴初めて見たぜ〜おもしれー。」
そ、そんなに凄い人なのか。
「伊織は俺だ。帰んぞ。 優。」
「え？あ、はぃ。」
状況が把握出来ないまま歩き出したあたしは、足の長い矢野君のスピードについていくのが精一杯だった。何とか駅につくと、初めて矢野君がこっちを見た。
「あ、ごめん、歩くの速かったよな？」