『......サタン。頼みとは?』


すると、姿はけして見せないが声だけが聞こえて来た。


〝 昨日の晩、お父様が無くなった 〟


『なんだと? ......まさか、そんな』


〝 賢者の石の寿命が尽きたのだよ。タローマティ......お前だってその事には気がついていただろう。......しかし、お父様は今後の我らのことを考えて下さっていた。もう一つ、賢者の石をお父様はお持ちだったのだ。しかし、我らの為に......使用しなかったのだろう。受け取り人は、タローマティ......お前だと、記されてある。お前は......賢者の石を、受け取るのだ 〟


『何故......私なのだ? ......長男のサタンが受け取るべきではないのか? ......それに、私は賢者の石など............』


〝 いらぬと言うのか。これさえあれば、不老不死となり、賢者の石が尽きるまで永遠の若さと命を手に入れる事が出来るのだぞ? 〟


『サタン。忘れたのか......。お父様は、この賢者の石に苦しめられて生きていたのだぞ?......普通に、歳をとり......普通に、死を迎えたいとな。サタン......。お父様は我らを思って賢者の石を残した訳ではあるまい。普通になりたかったがために、賢者の石がただただ尽きるのを待っていたのだろう......。そうなれば、賢者の石を後に私に残したと言うのであれば......私に不老不死となれと命じているのでは無いだろう......』


〝 ......っ。では、一体。何の為にお前に、賢者の石を...... 〟


『......さぁな。時々、お父様はこういう良く分からない事をするものだった。......まぁ、らしいと言えば、らしいな。
............とりあえず、受け取ろう。使用はせんぞ!』