「あなた......だ、誰なの?」

そう言って、ゆっくりと立ち上がると正方形の真っ黒な出口も見当たらないこの奇妙な部屋を見渡した。

「夏輝だよ。......落ち着け。皆、目を覚ますとここに居たんだ」

「それは何故? ......何の為に?」

「分からないわ。ただ......この場所、空気感が普通の部屋とは全然違う......。常に誰かに見られているような......そんな感じが」

「気味が悪いわ。こんなところ、とっとと出ましょう!」

「だが、肝心の出口が見当たらない」

「じゃあ、どうしろって? ......このまま、何もせずに飢え死にしろとでも?」

当然ながら、京子は、パニックになっていた。

「......まずは、自分達のことを話し合おう。そこから共通点が見つかれば、何故、こんな所に俺達が閉じ込められちまったのか、分かるかもしれねぇだろう?」

「確かにな。じゃあ、ケンジから話したら?」

「俺は、リバーサイド病院の整形外科医だ。毎日の様に患者の診察と手術に追われていた。それで、昨日は自宅へ帰るといつものように、酒を飲んでそのまま寝ちまったよ」

「と、年は?」

京子は、訪ねた。

「38だ。......今度は、お前の番だぞ? ガキが」

ケンジはそう言って、夏輝にほりの深い目を向けた。

「年はいくつなの? 結構、若いわよね」

そう、京子は言った。

「21だよ」

「じゃ、じゃあ、趣味は?仕事は何をしているの? ......それとも、大学生かな?」

京子は、質問攻めをする。

「趣味は、そうだな......映画鑑賞、かな」

京子は、夏輝に気があるのか、笑みを浮かべた。

どうやら、彼女のパニック状態は治まったようである。


そうして、夏輝は話を続ける。


「......俺は、東京都の裏町にたたずむ異界研究所の研究員。そこには、霊視能力をもつ人達がいて、その人達が異世界から呼び寄せてきた悪魔をてなずける為、研究を積み重ねていたんだ」