本当に、ずるいんだよ、桜井先輩は。



そうやって、無意識に私をドキドキさせて。



でも、桜井先輩にそんな気がないってことくらいわかってる。



あ、いつものパターンだ。



かっこいいなって思って、どうせ自分はってなって、叶わないって実感して、落ち込むっていう。



ダメだな、やめよう!



今は、かっこいいってことだけに集中しよう。




「はぁぁぁ。カッコよかったー」



バシッ。



「痛っ‼︎なにするの?!」



明日香が丸めて持っている教科書を睨みつける。



「カッコいい、カッコいい。うるさい‼︎いいかげんだまりなさい‼︎」



「そうだぞ。正直、うっとうしい」



俊ちゃんと明日香があきれた目で私を見てくる。



なによなによなによ。



少し前までは応援してくれてたくせにっ‼︎



それに、それに私がちょっとだけど、苦しんでることも知らないくせに。