艶子さんがたすき掛けをした紐を解きながら言いました。

「はい。艶子さんはもう行かれましたか?」

「まだなんよ。でも、この後友達と行くつもりなんや。局長はんも、今日はもう帰ってええって言ってくれたからな」

「そうなんですか」

「天宮さん、まだ?」

「すみません、もう少し待っててください。では、艶子さん後はお願いします」

「いってらっしゃい」

艶子さんと別れると、私と組長は初詣に向かいました。

今日はいつもより多くの人たちが道を歩き、活気にあふれている。

油断していると人とぶつかってしまいそうです。

「わっ!」

言ったそばから男の人と肩がぶつかってしまいました。

身体をフラつかせていると、すぐに組長が私の身体を支えてくれました。

「大丈夫?」

「はっはい!ありがとうございます」

私の身体を支えてもらった時に感じた、組長の腕の力強さに思わずドキッとしてしまいました。

野菜嫌いで、子供っぽいところがある組長ですが、やはり大人の男性なんですね。

「人が多いから気を付けてね」

「はい」

「じゃあ、行こうか」

そう言うと、組長はさりげなく私の手を握りました。