「お、音は隣の部屋から聞こえましたよ。隣の人がお腹を空かせているんじゃないんですか?」
我なりに苦しい言い訳ですが、この状況ではこれしか思いつきませんでした。
「ほ~……そうか。隣の部屋にいる奴がな……」
おや?私の嘘を信じたのでしょうか。
鬼副長はお粥をお膳の上に乗せると、部屋の外に持って行こうとしました。
「じゃあ、天宮が喰わねえことだし、その腹を空かせている隣人とやらにこれを持って行くか。じゃあな、天宮。次に飯を持って来るまで腹の虫と仲良くするんだな」
「あ……」
遠ざかるお粥をみたら思わず落胆の声が漏れた。
鬼副長と目が合って、慌ててそっぽを向く。
やせ我慢をしていることを知られたくなかったけど、どうやら遅すぎたらしい。
「天宮、ほら」
鬼副長が再び匙にお粥を掬って食べさせようと口元まで持ってくる。それでも意地を張ってそっぽを向いていると大きな溜息が聞こえた。
鬼副長が移動する気配がする。
またバカの一つ覚えみたいに回り込んで口に匙を持ってくるのかと思った。
けど、今回は違った。