プロローグ





「……じゃあねっ!」



「またね……!」




私たち家族は、タクシーの窓から手を振る。


他人を自分の家の前に残して旅立つのは、なんだか変なかんじがした。


今日見送りにきてくれたのは、友達と、従兄弟とその親。



その友達と私は、「親心友」という仲だ。


親友と心友を重ねたかんじかな?


自分たちで考え出した……というか、気づいたら定着していた。


彼女はもねちゃん。


気さくで親切で、とにかくいいこだ。



そんなもねちゃんとも、今日でしばらくお別れ。




それは……引っ越すから。




引っ越す先は、北海道。


ちなみにここは、関東。



だいぶ異郷の地だ、と思う人もいるかもしれない。


でも、私や妹にとって、全然そんなものではなかった。



だって、おばあちゃんとおじいちゃんがいるところだから。



つまり、お母さんの実家があるの。



だから見慣れた街ではあるし、抵抗はそこまでない。



1ヶ月滞在したことだってある。


しかも私と4つ下の妹、彩葉はそこで生まれているしね。



彩には申し訳ないけど、私はついこの前小学校を卒業したばかりだから、引っ越すにはちょうどいいタイミング。



あぁ、そんなに悲しむ要素なんてないじゃない。



……そう思ってはいるけど。









……なんで、泣けちゃうんだろうね。







私はそっと流れた一筋の涙を、後ろを見るふりをして誤魔化した。



今走っているこの道も、このコンビニも、この看板も、この木も、畑も、田んぼも。



しっかりと、目に焼き付けた。



ーーーーー次に見れるのはいつなのかわからないから。






はじまり