アイーダは急いで姿を現した。

たった今、黄金族人間の王子ファルが唇に含んだ一本の細い草を、必死に探した。

黄金が欲しいからではない。

彼が所有した物が欲しいのだ。

アイーダは、王子ファルに心を奪われていた。

最初に彼を見たのは、数年前である。

偶然にもこのエリルの森で、武術の稽古中であった彼の姿が目にとまった。

数名の青年の中で、一際異彩を放つ王子ファルに、一目で恋に落ちたのである。