それはシオンのために、野に咲く花を耳飾りに変え、彼女に贈った物であった。

「これが死体に引っ掛かってた。
俺がシオンに与えたんだ」

その言葉は、ファルがシオンを愛していると答えたも同然であった。

ダグダは、瞳を強く光らせ、真っ直ぐに自分を見つめる息子に、黙って視線を合わせた。

愛する女を、なりふり構わず助けに行くような男に成長するとは。

血は、争えん。

ダグダは、遥か昔の、若かりし頃の自分を思い出し、目の前の息子の姿と重ねた。

「よかろう。いずれにせよアーテス帝国とは戦わなければならない。ただし、策をたてるまでは動くな。七色の瞳の乙女を連れ去った人物の特定を急いで足取りをつかめ。最終的な攻め込み時期は、兵達の回復を見てから決める」

ファルは感謝を込めてダグダを見つめ、身を翻した。

待っていてくれ、シオン。

必ずお前を助け出す!