「諦めろ」

きゃあああ!

言葉と同時に首筋に激痛が走り、シオンはギュッと眼を閉じた。

信じられない……!なにするのよ……!

声にならない悲鳴をあげ、シオンはよろけた。

一方、アイーダは、ニヤリと笑うとシオンの顔を覗き込んだ。

アイーダの口は鮮血に染まり、唇の端からは血が滴り落ちている。

嘘でしょ、私を、咬んだの?!

ありえない、なんなの、この女ーっ!

「お前の血はいただいた。さらばだ」

アイーダは、グイッと片手で唇を拭うと、シオンを引きずり、大きな岩場の陰へと隠した。

本当はこのまま殺したかったが、七色の瞳の乙女を殺した者は、守護する者に必ず息の根を止められる。

せっかく生き返っても、それでは意味がない。

シオンは恐怖と怒り、生死の不安で胸が潰れそうになり、泣いた。

嫌だ、ファル、助けて…!

声が、出ない。

アイーダは、急いでユグドラシルの腕輪を揺らし、溶けるように姿を消して、その場を後にした。

これで、よし。