「あまり遠くへ行くな。じきに出発する」

シオンはしばらく歩き、川のすぐそばの、体が隠れそうな木の陰へ入った。

川の水をすくおうとしゃがみこんだその時である。

水面に自分以外の影を見つけ、慌てて顔をあげた。

「七色の瞳の乙女」

口を塞がれ、声がでない。

一瞬だけ見えたその顔は、雪のように白く、とても美しかった。

「私はアイーダ。お前と守護する者をこの世界へいざなった者だ」

…!

てことは、あの、黒い煙…!

シオンはアイーダの手を口から引き剥がそうと、彼女の腕をつかんだ。