「……ごめんね」

「何故謝る?」

「役に立てなくて」

「お前は多くを救った。傷付いた全ての兵士や荒れた大地、そして水も。
きっと同盟国を始めアーテス帝国の兵士にとっても、お前は偉大で尊ぶべき存在だ」

偉大で尊ぶべき存在……。

「……なぜ泣く?」

シオンは何でもないと言った風に少し頭を振った。

「……ファルと、またこうして話せるのが嬉しくて」

ファルは両手でシオンの頬を包み込むようにしてその涙を拭った。

「……目覚めたところだ。何か飲んだ方がいい。香を呼ぶから少し待ってろ」

「ん」

部屋を出てから拳をギュッと握り、ファルは立ち止まった。

シオンの悲しげな顔が、胸に突き刺さった。