「寝過ぎだ。きっと自力で歩けないぞ」

シオンはファルに甘えたくて答えた。

「じゃあ、抱いて歩いて」

ファルは少し驚いてシオンを見つめた。

それからエリルの森で初めてシオンを抱きかかえて歩いた事を思い出した。

……あの時のシオンは、恐怖と恥じらいを浮かべた表情で俺を見ていた。

七色に瞳を輝かせて。

俺はそんなこいつを見て……。

今は自らそれを望んでくれるのか。

ならばいつだって、俺は答えたい。

「ああ、どこまでも抱いて運んでやる」

白い歯を見せて、爽やかにファルは微笑んだ。

……ファル……。