きっとオーディンだ。

彼がグングニルをひと振りした時に、なにかを感じたのだ。

もしかしたら、『念じ方』をそれとなしに教えてくれたのかも知れない。

「……そう」

香は懐かしくて眼を細めた。

いつだっただろう。

一度だけ見た事があった。

世にも美しいあの光景を。

「香、私が出来ることをするわ」

「うん。でも気を付けて」

シオンは頷いてゆっくりと立ち上がり、全てをその瞳に映した。

空と大地、川。

崩れた建物。