オーディンは、ニヤッと笑ってファルを見つめた。

それから皆を見回して、声を張りあげた。

「暫く止まってろ!!」

言うや否や、素早くグングニルを片手で持ち、物凄い勢いで空気を裂くようにひと振りした。

「きゃあああっ!!」

閃光と共に荒々しい風が吹き、シオンは思わず顔を覆った。

身体に電流が流れたような感覚に息が上がる。

なに、今のは!!

風がやんだ気配に、シオンは恐る恐る顔をあげた。

「う、そ……」

そっと辺りを見回すと、自分とオーディン以外、皆動きを止めて彫刻のように佇んでいた。

ファル、アルゴ、ジュード、マーカス、それに香、兵士達……。

そのうちの誰もがピクリとも動かない。