マーカスの言葉に、皆がシリウスの亡骸を見つめた。

誰も驚かなかった。

「さよなら」

香りが小さくそう言うと、シリウスの姿は完全に消え、その代わり天から声が響いた。

「邪魔するぜ。お前、俺の馬を返せ。スレイプニル!!」

「オーディン」

二羽のカラスを肩に乗せたオーディンが、空に浮かぶように姿を現して、それを見たアルゴが叫んだ。

「こいつだ、あの時の魔性だ」

オーディンがあからさまにムッとして、アルゴを睨んだ。

「お前、無礼なヤツだな。俺はオーディンだ。主神……最高神であって魔性じゃねえ」

そういいながら右手を空に掲げると、ゆっくりと何かが輝き始めてオーディンの手にグングニルが戻った。