シリウスがゆっくりと瞬きをした。

彼の瞳から邪悪な光が消え、無表情に変わる。

やがてシリウスはゆっくりと瞬きすると、香に向かって口を開いた。

「……君は……君とは……会ったよね?……いつだったか……どこだったか……君を、俺は知ってる……待って、思い出すから……」

言いながらフワリと微笑む。

それは柔らかくて温かく、まるで春の日射しを思わせる笑顔であった。

シリウスの瞳が潤み、涙が一筋の線となり、皆が眼を見張った。

「ああ……時間がかかってしまって、ごめん。静麗(ジンリー)……」

それは小さな小さな声であったが、誰もの耳に届いていた。

香が大きく息を吸い込んだ。

一方、シリウスは穏やかな表情で香を見つめ続けた。

「静麗……あの時、伝えられなくてごめん……愛し」

言葉の途中でシリウスの身体がグラリと傾き、崩れ落ちた。

「剣清っ!!」