平和な世界を神に作れと頼むのか?

それは無意味だと気づかないシオンを、オーディンはイラついて見つめた。

それに……そうはいくか。

主神オーディンは、武力の神でもある。

彼にしたら戦いは格好の戦士集めの場なのだ。

気に入った兵士をヴァルキューレに伝え、その魂を連れ帰る。

オーディンは、より強い兵士を求めているのだ。

やがて来るであろう終末の大戦争のために。

「確かに私はこの世界の事情を何も知りません。でも、人が死ぬのはいやなんです。私、」

「人は誰でも死ぬ」

シオンが言い終わらないうちにオーディンは言葉を被せて彼女を制した。

「早いか遅いかだ。そしてその人生が、濃いか薄いかは、生きた長さでは量れない。戦いに散る命を幸か不幸か何故お前に分かる?」