その顔は本当に幸せに満ちていた。

「声をかけないのか?」

オーディンの問いにシオンは頷いた。

「今わかりました。自分の物差しで人の心を測るなと言ったあなたの言葉の意味が」

シオンは続けた。

「カイルが幸せなら、それでいいです」

さよなら、カイル。

あなたと私は、あまりいい出会いじゃなかったかも知れない。

でも、今は本当に思うの。

カイルに会えて良かった。

察したように、扉が閉まり始めた。

シオンはカイルを見つめ続けた。

この扉が閉じてしまうまで、見ていよう。