オーディンは頷いた。

「ああ。仲間とな」

……仲間……?

シオンは、ケシアの都でカイルと過ごした日々を思い返した。

部下こそいたものの、カイルに仲間とか友人といった類いの人間はいなかった。

仕事以外で人と交わらず、いつも独りだった。

「仲間……」

シオンが呟くように言うと、オーディンは扉の隙間を少しだけ振り返って見た。

「カイルはヴァルキューレに言ったそうだ。『今が一番幸せだ』とな」

……今が一番幸せ……。

シオンの脳裏に浮かぶカイルは物憂げで、いつも寂しげだった。