「人の心は複雑だ。ひとつの想いだけが独立している訳じゃない。様々な想いが絡まりながら胸に渦巻き、ひとつの思考となる。俺がカイルの胸の内を忠実にお前に伝えることなんか出来ねんだよ。ただ確実に言える事は」

オーディンは一旦そこで言葉を切ると、ゆっくりとした柔らかい声で続けた。

「カイルは、後悔してない」

カイルは後悔してない……?

「殺されたのに?!分からない、分からない」

シオンは声を震わせてオーディンを見上げた。

「なら、会えよ」

カイル…………。

シオンは震える両手を握りしめながら、大きな扉の奥へと視線を向けた。

「この中に……カイルは居るんですか?」