シオンは天幕から飛び出して空を仰いだ。

「オーディン!」

気が付くと、呼んでいた。

「最高神オーディン!」

辺りは焦げ臭く、怒号が響き渡り、空は厚い雲に覆われていたが、シオンはオーディンを呼び続けた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

……うるっせえ女だぜ。

主神オーディンは、ニヤリと笑った。

金剛石を散りばめた玉座に腰掛けると、グングニル(神槍)を肩に立て掛け、その上に逞しい腕をからませる。

それがオーディンのお決まりの姿勢である。

……今、いいところなんだ。

白金族人間と黄金族人間の戦いだぜ?

邪魔すんじゃねえ。

オーディンは、けたたましく自分の名を呼ぶ声を無視して一つ咳払いをした。

……けど、女だしなぁ。