「……骨が折れるぜ……ここまで来るのによぉ。まあ、この鎧のお陰でなんとか辿り着いたがな」

兵士は続けた。

「……何も獲って食おうなんて思っちゃいねーぜ。シリウス様からの贈り物を届けに来ただけだ」

言うなり、担いでいた麻袋をドサッと投げ、兵士はシオンを意味ありげに見つめると、その瞳を苛虐的に光らせた。

「ゆっくり拝みな!裏切りの代償……ああ、『愛の代償』と言うべきかもな。あばよ!」

兵士は身を翻し、戦いの混乱に乗じて姿を消した。 

シオンは早鐘のような鼓動に目眩を覚えた。

『裏切りの代償』

『愛の代償』

地に転がる人型の麻袋を見て、全身が震えた。

涙が止めどなく頬を伝う。

シオンはゆっくりと跪いた。

嗚咽を漏らしながら麻袋に右手を伸ばす。

ガタガタと震える指先で麻袋の紐を掴み、ゆっくりとその片方を引いた。

固い結び目は外れず、シオンは歯を食い縛ったが、激烈な恐怖と不安に歯の根が合わず、ガチガチと耳元で音が鳴る。

……見ないわけにはいかない……!

シオンは全身の力を奮い起たせて麻袋を開いた。