「ファルがイラついているわよ」

「朝の煌めきに眼を細めるのも腹立たしいのね」

ファルはチッと舌打ちして声のした方向を向いた。

森には噂好きでおせっかいな妖精が、数多く住んでいる。

…黙れ!

ファルはすぐ目の前の草を一本引き抜き、形の良い唇に挟むと、右手の親指と中指でなぞるように触れた。

「危ない!ファルが草を黄金の針に変えるわ」

「それを吹いてあたし達を殺す気よ」

早口でそう言うや否や、妖精達はたちまち消えてしまい、声だけが残った。