香の言葉が胸を突く。

『殺し合いなんてやめて、なんて言うんじゃないわよ?
……突然平和な国からやってきて、この世界の事をなんにも知らないクセに、無責任に自分の理想を押し付けるものじゃないわ』

香の言ったことは正しい。

無責任な言葉だけを吐くのは、無礼だ。

なら。

ファル。ファル。

目を閉じると、ファルの精悍な姿が脳裏に浮かぶ。

愛してる。愛してる。

よく考えると、彼は帝国の王子で、庶民の私とは身分違いの恋だよね。

短い時間だったけど、幸せだった。

シオンはクッと顔をあげた。