二人は違うのだ。

何も言わなくても分かって欲しいと思う男。

自分への愛を、態度と言葉に表して欲しいと願う女。

暫しの膠着状態の後、ファルの溜め息が聞こえた。

「シオン」

柔らかく、優しい声。

ああ。

ほんとに私はダメな女だ。

こんなにも優しい声で名を呼んでくれるだけで、本当は分かるのに。

彼の愛が、分かるのに。

「シオン」

ファルが再びシオンの名を呼んだ。

逞しい腕がシオンの身体にまわる。