「っ…………!」

ファルは反射的に顔を上げて立ち上がろうとしたが、それよりも早くシオンは出ていってしまった。

苦しげに眉を寄せ、片手で胸を押さえながら。

ファルは独りになった空間でギュッと眼を閉じ、拳を握りしめた。

シオン、シオン!

ファルの胸もまた、シオン同様切なく軋んでいた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

めちゃくちゃに走って、めちゃくちゃに泣きたかったのに、現実は厳しかった。

大勢の兵達で走れない。

彼らの中を縫うように進むと、シオンは誰にも見られないように涙を拭きながら歩いた。

「……っ!!」