「入れ」

ファルの声に慌てて視線を上げると、兵達が組み立てた小さな部屋の前だった。

ファル専用の天幕である。

入り口の布を上げたファルの脇から、中の様子が少し見えた。

柔らかい蝋燭の炎。

ファルの寝台。

「うん……」

シオンはファルの腕をくぐり、中に入った。

続けてファルが入る。

「…………」

腰から剣を外し、鎧を脱ぎ始めたファルに慌てて背を向け、シオンは俯いた。

ファルは、本当に私を好きでいてくれているんだろうか。