「私は兵達と少し飲むけど、シオンはどうする?」

香は暮れゆく夜空に向かってグイッと伸びをしてからシオンを見た。

「私、ちょっと顔を洗ってくるわ」

「了解」

香が兵と肩を並べて去っていくのを見てから、シオンは立ち上がった。

その時である。

急に目の前に、見慣れない格好の男性が現れて、シオンは息を飲んだ。

「私はガイザ帝国の近衛兵隊長です。
……実は王女が、どうしても貴方にお会いしたいと」

シオンは反射的に、近衛兵隊長の視線の先を追った。

見ると、遠すぎて顔立ちこそ分からないものの、侍女を一人従えた女性がこちらを見ていた。