「ちょっとっ」

「ついて来い、山猿」

シオンは怯えながらもムッとして、ファルのマントを掴んだ。

「シオンよ!山猿なんて、呼ばないでよっ」

ファルは、振り返りながらニヤリと笑い、切れ長の眼を細めた。

「フッ、もっと女らしくすれば、名前で呼んでやる」

こ、怖いけど……むっかつく!!

忌々しく思いながら一歩踏み出した途端、足首に激痛が走り、シオンは倒れた。

多分、あの黒い煙に飲み込まれて、この世界に来たときに痛めたんだ。

それに、身体中が痛い。

ファルは、崩れ落ちるように倒れたシオンに声をかけた。