ファルは、シオンの顔に自分の顔を近づけて低い声で言った。

「おい、山猿」

や、や、山猿!!

「俺の名はファルだ。
…今度騒ぐと命はないと思え」

…!!

や、やだ、冗談でしょ!?

けど、眼の前の男……ファルと名乗った男の眼は、氷のように冷たく、侮蔑の色が浮かんでいる。

その時、ファルの腰の長剣が岩に擦れて音を鳴らし、シオンは息を飲んでコクリと頷いた。

それを見て、ファルはシオンの手首を掴み直した。

「行くぞ」

「どこに?」

ファルはシオンを立たせながら、チラリと彼女を見て言った。

「王都リアラに帰るんだ。お前も連れていく」