シオンは静かに眼を開けた。

あれ…私、一体…。

何があったかを思い出そうとしてシオンは咄嗟に起き上がろうとした。

「いったぁ!」

…無理っぽい、起き上がれない。

そ、そうだ、会社のトイレの天井に何か黒い物体が現れたと思ったら、香が『魔性』と叫んで…。

必死に香にしがみ付いたんだけど、黒い風があまりにも激しくて…香?香はどこ?

「か、香?香?」

僅かに頭を起こして辺りを見回すも、香の姿は見えない。