ひらめいたただ一つの方法に、アイーダは賭けた。

ここで無理なら…連れ去ってやろうではないか!

多少の痛手はやむを得ない。

アイーダは薔薇のように美しい唇を引き上げ、こう言い放った。

『来い!七色の瞳の乙女!』

アイーダは黒い風を巻き起こしながら、香とシオンに覆いかぶさった。世界樹ユグドラシルの腕輪をシャラリと揺らし、二人をミッドガルド(人間界)から自分が暮らす世界、ジュードヘイムへと連れ去るために。

「きゃああああ!」

シオンは突然黒い煙のような風に包まれ、その猛烈な勢いに体中が引き裂かれそうになった。

「シオン、アタシに掴まって!
 おのれ魔性…!千年花火!」

香と他の誰かの悲鳴のような声を聞きながら、シオンは自分の体が引きちぎられるような痛みを感じ、そのまま訳が分からなくなり、意識が途切れた。