中庭を挟んだ向こう側には、ファルの住居がある。

勘の良いアジュールは、その視線の意味を瞬時に理解していた。

「ケシア奪還は、王子に任せられるのが良いかと。アルゴ、ロイザ、ジュードが帰還したのです。王子には、軍神マルスが味方しておいでです」

ダグダは、皮肉げに口角を上げた。

「お前が、神の名を出すなど、意外だな」

アジュールは、ダグダを見つめてから参ったと言うように笑った。

「ケシアに七色の瞳の乙女が囚われているなら、王子の士気は更に上がるというもの。それに仲間の帰還が追い風になるでしょう。
手前味噌ではありますが、王子には、我が息子、マーカスも付いております」

ダグダは、更にニヤリとした。

「では、我らは」