「その根拠は」

「門兵隊長に聞きますと、馬にも乗らず、徒歩で城門前をうろつき、全身は傷にまみれていたとか。
エリルの森で、王子と七色の瞳の乙女を見ていたなら、なぜシオンが襲われた時にすぐ、王子にご報告しなかったのでしょう。
なぜ、そこから姿を消し、ケシアの都へ行ったのでしょう?
そして、今度はケシアから、このリアラへ馬にも乗らずに、どうやってこんな短時間で来られたのでしょうか」

ファルは、押し黙った。

……確かにそうだ。

ケシアは、リーリアス帝国最北の都で、王都リアラからは、早馬でも3日は十分かかる。

エリルの森は、リアラとケシアの間にある深い森であるが、ケシア側へ向かうには獣道ばかりで馬では進み辛く、人の足ではとてもじゃないがそう簡単に辿り着けない。

土地勘があってはじめて、エリルの森を突っ切る事が出来るのだ。

それだけエリルの森は過酷で複雑なのだ。