アイーダは、コクンと喉を鳴らした。

「お前は、馬よりも早いのか?」

ガクガクと小刻みに体が震え出すのを、アイーダは止めることが出来なかった。

「エリルの森に血痕が残されていた。……あそこにいたなら、俺とシオンを見たのなら、誰がシオンを襲ったのか、目撃したんじゃないのか!?
答えろっ!!」

ファルは、怯えながら震えるアイーダを、刺すように見つめた。

……ここにくる前、巫女長レイアに会っていて良かった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一時間前。

「何が変なんだ」

ファルは、恭しく頭を垂れる巫女長レイアを見つめた。

「アイーダには、なにか不穏な気配がいたします」