「ファル様……私を……七色の瞳の乙女と思い、お抱きくださいませ」

アイーダは、囁くようにそう言うと、唇をファルの口元に寄せた。

「フッ」

………?

アイーダは、そっとファルの瞳を見上げた。

自分と同じくファルもまた、熱情をはらんだ眼をしているとばかり思っていたのに、彼の眼は冷えきった冬の荒野のように冷たかった。

アイーダは、体が急激に冷えるのを感じた。

「俺が愛してるのは、シオンただ一人だ。
シオンの心があればこそだ。お前じゃ代わりになれない」

「…………!」

「確か、エリルの森で俺とシオンを見たと言ったな」

アイーダは、息を飲んだ。

「そして、白金族人間の王とシオンが愛し合っていると」

ファルは、至近距離からアイーダを射抜くように睨んだ。

「なぜお前は今、王都リアラにいる」