「是非。この時期です。ケシアの都を奪われ、王子は焦っておいでです。どうぞ姉様のお力添えを」

サリの直感は、良く当たる。

おまけに洞察力に優れ、人の僅かな態度や表情を細やかに読み取る才能があるのだ。

ダグダ王にお伝えする前に、まず自分で見極めなければ。

巫女長レイアは水晶の首飾りにそっと触れると、ゆらゆらとくゆる香の煙をじっと眺めた。

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王ダグダとファルの元に、ジュードとロイザが帰還したとの知らせが届いたのはその日の午後であった。

城壁塔の門兵の目に、けし粒程の人物が目に留まり、やがてそれがボロ布のようなロイザを脇に抱えたジュードであるのが確認できた頃には、彼は無意識に叫んでいた。

「ジュード殿ならびにロイザ殿のご帰還!!跳ね橋をあげろーっ!!
王と王子にご連絡を!!」