早足で数分歩くと、使用人達が暮らす集合住宅が見えてきた。

ファルは建物の中へと入ると、アイーダを探した。

ファルの姿を目に止めた使用人達が、慌てて床に膝をつく。

「誰かアイーダを知らないか」

ファルの凛とした声が響いた時、

「ファル様、私はここでございます」

アイーダが、地に伏しながら控えめに声を発した。

ファルはアイーダの前まで進むと、彼女の腕を掴んで立ち上がらせた。

「シオンの話を聞きたい」

……今だ。

「あっ……」

アイーダはファルに腕を引き上げられたのを利用し、フラリと体を揺らすとファルの胸の中へと倒れ込んだ。