数時間後。

「アイーダ!アイーダはどこだ」

ファルは大股で王宮を歩きながら、数メートル離れたところで女中たちに指示を出していたサリに声をかけた。

アイーダが城に現れたとき、本当はすぐにでもシオンの事を聞き出したかったが、策士マーカスとケシアの都奪還の策を練らねばならなかったし、兵達の立て直しをしなければならなかったので、やむ無く後へと回したのだった。

女中長サリは床に膝をつき、両腕を胸の高さで組んで頭を垂れながら恭しく口を開いた。

「アイーダなら、キタラ琴の演奏を申し付けました。
先程までは演奏長のところにいたのですか、体の汚れが目立ちましたので、今は入浴を」

「分かった」

ファルは踵を返すと中庭を突っ切り、真っ直ぐ使用人専用の建物へ向かった。