この女は、一体何者なのか。

いくら王子の頼みとて、いきなり湧いて出たような者を、王子の肌に触れるような仕事に就かせる訳にはいかない。

サリは、アイーダを見つめてハッキリとした口調で言った。

「王子の体に触れる仕事は、長年勤めあげた信頼のおける者に任せてあります。あなたには」

アイーダは内心がっかりしたが、ファルからとてつもなく離れているような仕事は嫌だった。

ならば。

「では、キタラ琴の演奏をお申し付けくださいませ。得意なんです」

「王と王子、その側近の方々の食事時、必ずキタラ琴の演奏をします。演奏責任者のところへ案内します。着いてきなさい」

アイーダは頷いた。

サリは、歩き出しながら思った。

キタラ琴が得意なら、なぜ最初聞いた時に言わなかったのか。

この女には何かある。

王子に接触したがる訳は。

サリの心に、ムクムクと疑問が沸き上がり、彼女の心を支配した。

巫女長レイアに会わなければなるまい。

サリは静かにそう思った。