アルラは蝋燭の炎を調理台に移しながら、憂鬱そうに答えた。

わずかな炎が大理石の台を柔らかく照らす。

「カイル様は、王であるシリウス様の、一番の側近です」

一旦そこで言葉を切ってから、アルラは視線をさ迷わせて考えながら、続けた。

「カイル様は、剣士の中の剣士です。
ですから、カイル様の部屋の前に限り、守衛はいません」

「シオンが独りになる時間はある?」

「まだ、日が浅いので何とも言えませんが、湯あみの時間はおそらく。
カオルさん、私の部屋へ行きましょう。服をお貸しします」

そう言うと、アルラはフッと蝋燭を吹き消した。

二人は、伸びたままの守衛を残し、食堂からそっと出た。