やだ、気持ち悪い……。

シオンは、思わずベッドに倒れ込んだ。

……なに、吐きそう。

悔しい、気持ち悪い……。

そのまま眼を閉じ、意識が途切れた。


……やっと薬が効いたか。

涙を頬に伝わらせたまま眠り込んだシオンを見て、カイルは大きく息をついた。

……こんなやかましい女の世話を命じられるとは。

カイルはしばらくの間、シオンの愛らしい寝顔を見つめた。

シリウスの言葉が蘇る。

「カイル。お前の魅力で『七色の瞳の乙女』を虜にするんだ。お前の紡ぎ出す愛に溺れさせろ。お前なしでは生きられないほどにな。白金族人間と共に生きる決意をさせるんだ」

カイルは窓辺に立ち、夜空を仰いだ。

悠々と光る銀の月は、白金族人間の、未来永劫の繁栄を思わせた。