後ろを振り向かずに、ただただ走った。

タクシー、タクシー!
そう心で叫びながら、駅に着いた美優は、タクシーに飛び乗る。




「お客さん、どこへ?」

驚きながらタクシーのおじさんは、問いかけた。

息が乱れて、声が出ない。

急いで、バックから封筒を出して、住所が書いてある紙を渡した。





「ここですね?」

声が掠れて出ない美優は、早く出して!と言わんばかりに、首を何回も縦に降った。




ゆっくりと車が動く…



――バン!


ギョッとして音が聞こえた方を見る。

…お父さん!

何度も何度も繰り返しタクシーの窓を叩いて、美優をタクシーから降りさせようとしている。


「美優!どこ行くんだ!」

血相を変えたのか、面白がっているのか…分からない。お父さんが、また窓を叩く。




「お客さん、どうします?」

後ろに振り向き、怪訝そうな顔でタクシーのおじさんは言う。


「…出して…出して!早く!」

おもいっきり声を出しが、声が掠れて、タクシーのおじさんに届いていない。


だが、気持ちを察したのか車はスピードを上げて、どんどんお父さんが遠くなって行った。